100選プライムR元年度「株式会社千葉銀行」地銀生き残りをかけたダイバーシティ戦略とは?

経済産業省ーダイバーシティ2.0、企業100選、なでしこ銘柄など

少子高齢化+ビジネスのグローバル化+産業構造の変化 =「働き手不足、高度技術人材の不足」が押し寄せている日本。

「募集をかけても良い人が集まらない・・」

「新しく人を雇ってもなかなか定着しない・・」

社員が新しい技術に追い付いていない・・」

といった悩みは、多くの企業が抱えていることでしょう。

こういった悩みを解決したいなら、経済産業省が推進する「ダイバーシティ経営」が大きなヒントになります

ダイバーシティ経営のガイドラインとして経産省が発表している、『ダイバーシティ 2.0 行動ガイドライン』。それに沿って、中長期的に企業価値を生み出す取り組みを続ける企業を選定したものが、『100選プライム』です。

100選プライムの事例からは、企業がどのような課題を持ち、どのような戦略を立て、どのような成果を出したのかが、よく分かります。

ということで今回は、『令和元年度 100選プライム』受賞の「株式会社千葉銀行」さんについて、その取り組みと成果をご紹介します。

「株式会社千葉銀行」について

まずは、株式会社千葉銀行さんの企業情報を見ていきましょう。

公式HP 株式会社千葉銀行(企業・IR情報のページ)

企業概要
会社設立年:1943 年
資本金:145,069 百万円
本社所在地:千葉県千葉市中央区千葉港 1-2
事業概要:普通銀行業
売上高:210,218 百万円(2019 年 3 月)

HP「経営方針・戦略」のひとつにダイバーシティ推進が挙げられており、その具体的な取り組みが確認できます。

また、「持続的経営(サステナビリティ経営)」の重要課題として、「地域経済・社会」「高齢化」「金融サービス」「ダイバーシティ」及び「環境保全」の5つを特定されています。

なぜダイバーシティ経営を推進したの?

ベストプラクティス集の中で、千葉銀行さんは、経営課題と人材戦略をこのように設定されています。

経営課題
地方銀行としての生き残りをかけ、一人ひとりの社員の能力を最大限発揮する組織への転換を企図

人材戦略
一番の資産である「人材」を最大限に活かし、戦力化を図ることにより、「リテール・ベストバンク」グループの実現を目指す

令和元年度 新・ダイバーシティ経営企業 100 選 100 選プライム/新 100 選 ベストプラクティス集 - 経済産業省

地方銀行再編が進む中、同じような課題を感じていらっしゃる企業も多いのではないでしょうか。

また、背景を以下のように述べられています。

地方銀行を取り巻く環境が大きく変化

  • 異業種の参入や金利低下、少子高齢化等を背景に、競争が激化
  • 顧客ニーズの多様化
  • フィンテックの進展等に伴うビジネスモデルの転換が迫られる

「ルール偏重で変化が苦手な組織のままでは競争に生き残れない」との危機感

すべての社員が活躍できる環境へ変革し、多様な発想を生み出せる組織へ

「ダイバーシティ」が経営戦略に必須の要素となった理由がよく分かりますね。

ダイバーシティ経営をどのように進めたの?

それでは、実際にどのような方針で進められたのかを見ていきましょう。

「女性活躍推進」中心の段階

● 2005年頃から、女性活躍推進の取り組みを本格化。
全社員の4割を占める女性社員の活躍推進に向けて、制度の拡充や女性管理職候補の育成強化に取り組む。

● 2011年に、人事部内に専担組織「女性活躍サポートチーム」を設置
女性社員の就業継続やキャリアアップのための施策に重点的に取り組む。

対象の拡大と方針の発信

● 2011年、長時間労働是正のための業務効率化や働き方改革に着手。
女性活躍推進を中心とした従来の取り組みから、すべての社員の「活躍」を促進する動きへとシフトチェンジ

● 2014年からの中期経営計画にて、経営課題の一つに「人材育成の一層の充実」を位置づけ、経営課題に対し人材戦略として解決を図る方向性を明確化。

● 2015年に「ダイバーシティ行動宣言」を策定・公表
経営戦略としてダイバーシティ推進に取り組む姿勢を広く発信。

● 2017年からの中期経営計画では、「属性によらず、一番の資産である”人材”、つまり一人ひとりの社員の個性や能力を最大限に活かすことにより、環境やビジネスモデルの変化に対応する」という方針を明確化。

具体的なプロジェクト等

● 2007年、障がいのある職員の活躍推進の取り組みの一つとして、地銀で初となる特例子会社「ちばぎんハートフル株式会社」が認定される。

● 2014年、ボトムアップ施策を検討する「ダイバーシティ推進委員会」、多様な人材の活躍をサポートする「ダイバーシティ推進部」を新設。
個別面談や研修によるサポート、男性の育児参画を支援する取組を開始。

● 2016年に「働き方改革推進部」、翌年に「働き方改革及び業務効率化推進委員会」を設立。
組織全体で業務プロセスの見直しを進める。
管理職の役割として、業績だけでなく組織や部下の柔軟な働き方も実現することを明確化。

● 2016年より毎年、全社員を対象に「ダイバーシティアンケート」を実施。課題発見→改善の取り組みを積み上げている。

● 2017年からの中期経営計画に基づき、若手の「業務スキル判定」、職務公募制度「キャリア・セレクトプラン」「1 on 1 トーク」を開始。

「プロフェッショナル人材の育成」「職員一人一人の働き方を見直し、付加価値の高い業務に特化できる体制を整備」を掲げて取り組み中。

社外との連携

● 2014年、同社トップを発起人とした「輝く女性の活躍を加速する地銀頭取の会」を核に、全国の地銀を巻き込んだ「地銀人材バンク」を主導。

● 県内での情報交換や取り組みの横展開、企業・団体連携での施策実施など、業界・地域全体でダイバーシティ推進を阻む課題解決に取り組んでいる。

「女性活躍推進」から「すべての社員の活躍推進」へと広がり、業界・地域も巻き込んで活動されている流れがよく見えますね。

ダイバーシティ経営の成果とは?

次に、取り組みの結果として、どのような成果を得られたのかを見ていきましょう。

女性の活躍推進における成果

  • 2019年7月時点で、女性の取締役・執行役員が4名(うち2名はプロパー)、女性部長が6名誕生
  • 女性の支店長・本部副部長・所長は2名から25名に、副支店長は9名から58名に増加

取締役会をはじめとした意思決定の場への女性の参画が進み、より多様な観点からの議論が可能に

  • 女性渉外担当者が36名から207名まで増加
  • 投資型金融商品販売を主担当とする渉外は女性が6割を超え、成績上位者の7割を女性が占めるまでに

預金や貸出金は右肩上がりを続け、強固な顧客基盤の構築を実現

働き方改革や生産性向上の成果

  • 営業店の一人当たり平均時間外労働は、2013年度→2018年度で月4~6時間の削減

本業収益の拡大につながり、業務粗利益は2016年以降上昇を継続中

  • 職務公募制度を通じて新たな業務にチャレンジしようとする社員が年々増加
  • 2019年には78名と、前年の2.5倍(うち女性は4倍)の伸び

変化を苦手とした組織風土が変容しつつある

外部評価の高まり

  • MSCI 日本株女性活躍指数に採用、2019年6月時点でスコア 8.95(最高 10)と高評価

「MSCI」とは、米国の金融サービス会社です。同社が公表する各種指標は、世界の機関投資家の約90%以上が、国際株式投資のベンチマークとして採用しています。

参考)MSCI公式HP MSCI 日本株女性活躍指数

  • 顧客企業や地域の学校等に対し、女性活躍やダイバーシティ経営についての講演・講座を積極的に実施することで、地域社会全体での多様な人材活躍推進におけるリーダー的存在へ

取り組みを継続的、積極的に発信してこられたことが、外部評価につながっていることが分かります。

まとめ

今回は、『令和元年度 100選プライム』受賞の「株式会社千葉銀行」さんについて、その取り組みと成果をご紹介しました。

激変する経営環境の中で、生き残りをかけた戦略としてダイバーシティを積極的に推進された素晴らしい事例ですね!

こちらの ベストプラクティス集(経済産業省 経済産業政策局 経済社会政策室)で取り組み詳細が確認できます。ぜひ参考にしてください!

その他の『100選プライム』受賞企業についてはこちらをどうぞ!

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