経済産業省が推進する「ダイバーシティ経営」。
少子高齢化、ビジネスのグローバル化、産業構造の変化 が押し寄せる日本において、多様な人材が活躍できる環境作りは、企業にとって重要なテーマとなっています。
そんな中、ダイバーシティ経営推進のガイドラインとして経産省が発表しているのが、『ダイバーシティ 2.0 行動ガイドライン』です。そしてそれに沿って、中長期的に企業価値を生み出す取り組みを続ける企業を選定したものが、『100選プライム』です。
令和2年度(2020年度)をもってこの取り組みは終了となりましたが、参考となる多くの事例が発表されてきました。
今回は、最終回である『令和2年度 100選プライム』に選定された2社のうちの1社である「大橋運輸株式会社」さんについて、その取り組みと成果をご紹介します。
『令和2年度 100選プライム』もう1社の「日本ユニシス株式会社」さんについてはこちらをどうぞ!
大橋運輸株式会社について
まずは、大橋運輸株式会社さんの企業情報を見ていきましょう。
公式HP 大橋運輸株式会社
企業概要
会社設立年:1954 年
資本金:30 百万円
本社所在地:愛知県瀬戸市西松山町 2-260
事業概要:一般貨物自動車運送業
売上高:1,162 百万円(2020 年 1月)
従業員数:109人 (2019年5月時点)
HPを拝見すると、まず、その見やすさが印象的!色遣いや文字、写真やイラスト、社のオリジナルキャラクターなど、「HPはみんなに見てもらうためのもの!」というサインを感じます。
また、取り組みとして「ダイバーシティ&インクルージョン」「地域活動 / CSV経営」「健康経営」「SDGs」の4つが挙げられており、”ダイバーシティ”という要素が経営戦略の一部として有機的に機能していることが伺えます。
なぜダイバーシティ経営を導入したの?
設立からの流れを見ていきましょう。経営方針の変遷の中で、多様な人材の確保が重要課題となった経緯が分かります。
- 1954年設立、地元である愛知県瀬戸市の陶器輸送を主要事業とする。
- 1990年代以降、窯業の需要低下やトラック運輸業の規制緩和を背景に、大手運送会社の下請に転換。
- そのことから、価格競争の激化に加え、労働力不足や長時間労働が慢性的な問題となる。
- 2010年頃から、メーカー等の顧客との直接取引へと事業転換を図る。
- 同時に、採用力強化に向け、福利厚生の充実や社員の能力向上支援、食育等による健康経営といった取組を次々と実施。社員満足度を高めていく。
- 2014年頃から、地域社会の高齢化を見据え、遺品整理・生前整理、引越サービスといった BtoC事業に進出。
- 加えて、一般消費者から引き取った家財等を、主にアジアへ輸出するビジネスを開始。
- 精密な部品の運送や、顧客との丁寧なコミュニケーションが求められる新規事業において、「単なる労働力にはとどまらない”人財”の確保と活躍」を実現する人材戦略が不可欠となる。
具体的な施策は?
続いて、具体的にどのような施策が実行されてきたのかを見てみましょう。
◆「今ここにいる社員」から
2007年「今ここにいる社員の満足度を向上させることが先決」として、社員満足度調査を開始。
◆ 女性や高齢者の積極活用へ
2011年 採用の間口を広げるため、女性の積極採用とともに女性活躍推進の取り組みを開始。
2012年 高齢者の雇用延長や新規採用を開始。
さらに、社員が健康で長く働くことのできる健康経営の取り組みも開始。
◆ さらに幅広い多様性へ
2014年 外国人の現地採用を開始。
LGBTQ 社員の採用と活躍のための基盤づくりにも着手。
◆ そして次のステージへ
2017年~ 新たな事業領域拡大の中で、「より意識の高い人材の確保」と「社員の成長」が課題に。
社員の育成やキャリアパスの明確化等に取り組む。
「ダイバーシティ経営」という名称が世間に広まる前から、継続して積極的に手を打ってこられたことが分かりますね。
こちらのコメントからは、自社が生き残り成長するために必要な「自分ごと」として、試行錯誤されてきたことが伺えます。
長年ダイバーシティ経営に取り組んできましたが、中小企業だからこそダイバーシティ経営が必要とトライ&エラーを繰り返し職場環境の改善に取り組んできました。ダイバーシティ経営を継続する事で、職場環境の向上や採用力の強化に繋がりました。そして、多様なメンバーが集まる事で、個々を認め合いチームワークも良くなっています。
大橋運輸株式会社 代表取締役 鍋嶋 洋行氏 受賞企業コメントより
ダイバーシティ経営で得た成果とは?
それでは、取り組みによる具体的な成果を見ていきましょう。
多様な人材が活躍する組織
- 女性社員比率:5%(2006年時点)⇒ 20%(2018 年時点)
- 女性管理職数:管理職全体の半数へ
- 外国籍社員:8 名 が正社員として活躍
- 障がいのある社員: 4 名 が正社員として活躍
- LGBTQ 人材:複数の部署で活躍
ビジネスモデルの転換やビジネス領域の拡大
シニア社員の経験や健康経営への取り組み
- 高度なスキルを要する自動車部品メーカーとの取引業務に大きく貢献
- 安全運転評価点が高い「Aランクドライバー」の比率が53%(2015 年)から 91%(2019 年)に向上
一人ひとりを大切にする文化や多様な人材の参画
- 幅広い顧客に対してきめ細やかなサービスを提供できるようになり、生前整理・遺品整理といった事業で顧客満足度が向上した
- 遺品整理士の認定資格者や福祉住環境コーディネーターなど、多彩なスキルやバックグラウンドを有する人材が中途入社で活躍
- LGBTQ の当事者からの生前整理・遺品整理の依頼も増加
- 生前整理等で引き取った家財道具等をアジア諸国に輸出する事業に、輸出先の国の出身者である社員が参画
業績向上
● 個人向け事業部で 3 倍の売上増加を記録(2014 年から 2019 年までの 5 年間で)
● 輸出事業において、現地ニーズを細かく反映した仕入れ活動が可能に
⇒ 輸出時の 1 コンテナ当たりの利益が増加、輸出部門全体の高収益化へ
外部からの評価
- 経済産業省の健康経営優良法人を 5 年連続受賞
- 2017 年『新・ダイバーシティ経営企業 100 選』に選定
- 業界団体や企業、自治体からも多くの招待を受け、社全体で取り組みに関するメッセージを発信
- こうした発信が契機となり、新たな優秀人材の獲得へ
多様な人材が活躍できる環境が、新たなビジネスモデルを生む土壌となっていることがよく分かりますね!
まとめ
今回は、『令和2年度 100選プライム』受賞の「大橋運輸株式会社」さんについて、その取り組みと成果をご紹介しました。
ダイバーシティと企業戦略が深く結びついている、素晴らしい事例ですね。
こちらの 紹介動画 や ベストプラクティス集(経済産業省 経済産業政策局 経済社会政策室)で取り組み詳細が確認できます。ぜひ参考にしてください!
100選プライムに興味がある方はこちらの記事もどうぞ!
ダイバーシティ経営について知りたい方はこちらの記事もどうぞ!