100選プライム「日本ユニシス株式会社」ダイバーシティ経営 5つの成果とは?

経済産業省ーダイバーシティ2.0、企業100選、なでしこ銘柄など

経済産業省が推進する「ダイバーシティ経営」。そのガイドラインである『ダイバーシティ 2.0 行動ガイドライン』に沿って、中長期的に企業価値を生み出す取り組みを続ける企業を選定したものが、『100選プライム』です。

現在この取り組みは終了しており、令和2年度(2020年度)が最終回となったのですが、これまでに選定された企業の事例集などはまだ見ることができ、とても参考になります。

今回は、最終回である『令和2年度 100選プライム』に選定された2社のうちの1社である「日本ユニシス株式会社」さんについて、その取り組みと成果をご紹介します。

なお、今回の記事の内容は、 経済産業省が発表している ベストプラクティス集 、および日本ユニシスさんの公式HPを参考にまとめました。

『ダイバーシティ 2.0 行動ガイドライン』とは?

まずは、『100選プライム』の評価基準となる『ダイバーシティ 2.0 行動ガイドライン』について内容を確認しておきましょう。

評価のポイントとなる取り組みとして、以下の「実践のための 7 つのアクション」が挙げられています。

実践のための 7 つのアクション

  1. 経営戦略への組み込み
  2. 推進体制の構築
  3. ガバナンスの改革
  4. 全社的な環境・ルールの整備
  5. 管理職の行動・意識改革
  6. 従業員の行動・意識改革
  7. 労働市場・資本市場への情報開示と対話

また、ダイバーシティが企業価値向上にもたらす主な効果(成果)として、以下の4点が挙げられています。

ダイバーシティが企業価値向上にもたらす主な効果(成果)

  1. グローバルな人材獲得力の強化
  2. リスク管理能力の向上
  3. 取締役会の監督機能の向上
  4. イノベーション創出の促進

100選プライムに選定された企業は、このような取り組みを実行し、成果を出したということですね。

『ダイバーシティ 2.0 行動ガイドライン』についてはこちらを参照ください。

日本ユニシス株式会社について

次に、受賞企業である「日本ユニシス株式会社」さんの基本情報をご紹介します。

公式HP 日本ユニシス株式会社

会社設立年:1958 年
資本金:54億8,317万円
本社所在地:東京都江東区豊洲 1-1-1

売上高:
(連結)3,096億85百万円(2021年3月期)
(単体)1,797億58百万円(2021年3月期)
従業員数:
(連結)7,913名(2021年3月31日現在)
(単体)4,407名(2021年3月31日現在)

事業概要:
クラウドやアウトソーシングなどのサービスビジネス
コンピュータシステムやネットワークシステムの販売・賃貸
ソフトウェアの開発・販売および各種システムサービス

社史を拝見したところ、以下のような流れで現在に至っていらっしゃるようです。

  • 1886年 米国バロース社創立
  • 1933年 米国スペリー社創立
  • 1958年 日本レミントンユニバック設立 (後の日本ユニバック)
  • 1973年 高千穂バロース設立 (後のバロース)
  • 1986年 米国スペリー社とバロース社の統合により、米国ユニシス誕生
  • 1988年 日本ユニバックとバロースの統合により日本ユニシス発足

コンピュータ黎明期に創立され、M&Aを経ながら、時代のニーズに呼応したITサービスを提供されてこられたのですね!

なお、コーポレートブランドの再構築のため、2022年4月より、商号を日本ユニシス株式会社からBIPROGY株式会社へ変更されることを発表されています。

ダイバーシティ推進の背景~経営課題と人材戦略

日本ユニシスさんのダイバーシティ推進の背景となる、経営課題と人材戦略を見ていきましょう。

経営課題
「社会課題を解決する企業」として、イノベーションを創出するために
その源泉となる知見・経験を社員の多様性から引き出す

人材戦略
社員の考え方や価値観を形作る様々な「役割」に視点を当てる事で
価値創造を生み出す適切な人材ポートフォリオの実現を企図

AN
AN

それではここで、これら経営課題と人材戦略について、詳しく語っていただきましょう!

(ベストプラクティス集を参考に筆者がまとめた内容です)

困りネコ
困りネコ

読みやすいように、架空の人物が語るかたちをとっているにゃ!

ご了承くださいにゃ。


経営課題について

従来型のビジネスでは、「顧客ニーズに対し決められた仕様・予算・納期のもとでシステムを構築し、安定稼働させること」が求められてきました。

しかし近年、先進技術を活用するゲームチェンジャーや世界を席巻するプラットフォーマーの登場など、激しい環境変化に晒されています。

従来型の事業モデルだけでは限界を迎えるという危機感に直面し、新たなデジタルサービスの提供に向けた事業変革を課題としています。

また、組織内部の風土や文化を変革していく必要性にも迫られています。

品質第一の、「失敗を許さない」「バグを徹底的に見つけ出す」文化では、新たなニーズに応えるためのチャレンジを促進することは難しいからです。

人材戦略について

上記のように、事業存続のためにはグループ全体で変わらなければならないという危機感が、同社の人材戦略の転換の起点となっています

さらに、同社が目指すビジネスモデルとして、社会課題解決型のデジタルサービスを提供する「ビジネスエコシステム」の中心となることを、グループの存在意義として再定義しました。

より多様な領域のステークホルダーと協働し、多様な社会的ニーズへの感度を必要とする新領域での成長を目指していきます。

そのためには、属性や経歴に加えて、多様な視点や価値観を包含する「人材ポートフォリオ」が必要であると考えました。

個々の多様性だけでなく、個人の内に多様な視点や価値観を持つ「イントラパーソナル・ダイバーシティ」を高めることを重視し、それを可視化する仕組みの構築に注力しています。

これらを通じて目指すのは、”社員が同質化せず、アイデンティティが多様化する組織”です。

社員一人ひとりの強みをより多面的に理解することにより、それぞれの自己実現につながるチャレンジを社内で実践できるキャリア形成や人材配置を促しています。

ダイバーシティ経営について社内の声は?

経済産業省のサイトに、受賞企業の取組動画があります。これを見ると、実際に取り組みに関わった皆さまの言葉を聞くことができます。

(以下、日本ユニシス株式会社の皆さまのコメントより抜粋)

「変化しなければならない、ならない、とMustばかり言い続けると、人間嫌ですよね。なので、Mustではなく、実は変わることによってワクワクするんだ、ということをどうやってみんなに分かってもらうかを工夫しました」

「失敗が当たり前、失敗も認めよう」「私自身は、成功のKPIは失敗の数であると言っています」

平岡昭良 代表取締役社長 のインタビュー動画より

みんなでディスカッションをずっとやってきている中で、少しずつ自分の頭も整理されて、現実のこととして受け止め始められたというのが、正直なところ。

構えてしまうと何もできなくなっちゃうかなと思うので、例えば、違う年代の人3人と喋ってみようとか、簡単なことから、本当に体を動かしてやってみるというのがどこまでできるか。

難しいことは考えずに素直に受け入れていければよいだけ。

アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)があるということを認めながら、いかにコントロールしていくかが一番大事。

トップご自身が意志をもってダイバーシティ経営を牽引されていること、社の皆さまが手探りしながら前向きにチャレンジされていることがよく分かる言葉ですね。

ダイバーシティ経営で得た成果とは?

さてそれでは、日本ユニシス株式会社のダイバーシティに関する取り組みと成果とは、どのようなものだったのでしょうか?

1.新規事業の成長

● 新規事業創出プログラム、業種業態を超えたステークホルダーとの協働などから、多くの新規ビジネスを輩出
(例:バーチャル住宅展示場サービス、 AI ホスピタルによる高度診断・治療システム、電子チケット流通サービスなど)

女性社員の発想から生まれた保育業務支援サービスが、2020年現在で約150施設に導入されるなど高実績

2.売上・利益の成長

  • 上記のような取り組みの結果、売上が順調に推移
    270億円(2017年度実績)⇒ 480億円(2020年度実績)600億円(2021年度予想)
  • コロナ禍の中でも成長を続けており、連結売上高は3,116 億円、当期純利益は 182 億円と 5 期連続で過去最高益を更新

3.社員の働き方やエンゲージメントの向上

全社員を対象としたテレワーク制度の導入をはじめとする、働き方改革を推進。取組前(2015年)と比較して、以下の改善が見られた。

  • 残業時間数:4.6 時間減、有給休暇取得率は 17% 増(2020年実績)
  • 男性の育児休業取得率:23.4%(平均取得日数 55 日)まで上昇(2019年実績)
  • エンゲージメントスコア:12.5 ポイント向上(2020年実績)

4.女性管理職比率の向上

● 女性管理職比率の目標値を、2020年度末で10% 以上と設定。※2019年度時点では 7.4%(45 人)

● ESG 経営などの知見が豊富な女性社外取締役を選任することで、取締役会レベルを起点とした女性活躍推進の取組を加速。

● 結果として、2020年7月時点で 10.2%(66 人)を達成(参考:業界平均は 8.0% )

5.社外からの評価・表彰

働き方改革や女性活躍推進の取り組みが評価され、以下の受賞・選定を受ける。

  • 2018年 イクメン企業アワード両立支援部門グランプリを受賞
  • 2017年 MSCI 日本株女性活躍指数(WIN)の構成銘柄に選定
  • 2018年 MSCI ジャパン ESG セレクト・リーダーズ指数銘柄に選定

まとめ

今回は、『令和2年度 100選プライム』に選定された「日本ユニシス株式会社」さんについて、ダイバーシティ経営への取り組みと成果をご紹介しました。

先ほどご紹介した、「実は変わることによってワクワクするんだ、ということをどうやってみんなに分かってもらうかを工夫しました」というお言葉は、これからの日本企業にとって、とても大事な言葉になるのではないかと思います。

その他取り組み詳細は、経済産業省が発表している ベストプラクティス集 でご覧いただけます。ぜひ参考にしてください。

実例をもっと見たい方はこちらをどうぞ!

ダイバーシティ経営に興味があるあなたはこちらの記事もどうぞ!

タイトルとURLをコピーしました