待ったなし!の加速の一途をたどる、日本の 少子高齢化、ビジネスのグローバル化、産業構造の変化 。
多くの企業が「人」にまつわる課題を抱え、日々頭を悩ませています。
「育児や介護で離職する人が増えた・・」
「海外市場に対応できる人がいない・・」
「ベテランが新しいIT技術についていけない・・」
経済産業省は、そのような課題への対応策として「ダイバーシティ経営(多様な人を活用して企業の競争力を高める経営)」を推進し、2017年には『ダイバーシティ 2.0 行動ガイドライン』を発表しています。
そしてそのガイドラインに沿って、中長期的に企業価値を生み出す取り組みを続ける企業を選定したものが、『100選プライム』です。
今回は、初回である『平成29年度 100選プライム』受賞の2社のうち1社、「株式会社エヌ・ティ・ティ・データ」さんをご紹介します。
「ダイバーシティ経営?よくわからない」
「担当者になったけれど、何から始めればいいんだろう・・」
と感じている皆さま、実際の事例を見ると具体的なイメージがわいてきますよ!
企業情報
まずは、株式会社エヌ・ティ・ティ・データさんの企業情報を見ていきましょう。
公式サイト 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
企業概要
会社設立年:1988年
資本金:1,425億2千万円(2021年3月31日現在)
本社所在地:東京都江東区豊洲3-3-3 豊洲センタービル
事業概要:システムインテグレーション事業、ネットワークシステムサービス事業、その他これらに関する一切の事業
売上高: 23,187億円(2020年度決算)
従業員数:139,700名(グループ全体/2021年3月末現在)
さすがのスケール!ですね。大企業がとる方針は社会全体にも影響を与えるので、今回の事例は日本の働き方のトレンド推移を掴む参考にもなると思います。
ダイバーシティ経営の位置づけとしては、ESG 経営における重要課題として「人財」カテゴリーを設け、「IT 人財の確保・育成」「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」「働き方改革の推進」を挙げられています。
こちらの サステナビリティレポート で詳細を確認できます。
ダイバーシティ経営推進の背景とは?
エヌ・ティ・ティ・データさんは、ダイバーシティ推進の発端を以下のように述べられています。
同社が、ダイバーシティ推進に取り組むに至ったのは、事業の中核でもある「IT」がきっかけである。現在ではダイバーシティ推進先進企業であるが、当初からダイバーシティ推進を目指していたわけではなく、同社サービスの売上拡大及び、労働人口の減少等の外部環境の変化への対応には、「IT を用いた新しい働き方(ワークスタイル・イノベーション)」を社内で実践し、他社のモデルとなることが同社にとって有効な施策と考えたからである。
平成29年度 新・ダイバーシティ経営企業 100選プライム ベストプラクティス集 – 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
”顕在化した企業の課題解決”ではなく、「変化する外部環境に対して、”自社ビジネスが解決策になると実践し示す”ことで、競争力を強化すること」が当初の狙いだったのですね。
ダイバーシティ経営の成果とは?
次に、 エヌ・ティ・ティ・データさんのダイバーシティ推進の成果を見てみましょう。(『平成29年度 新・ダイバーシティ経営企業100選 ベストプラクティス集』よりまとめ)
1.売上の拡大、イノベーションの創出
● 創立以来継続した売上の拡大を達成
● ビジネスのグローバル化を進め、50 以上の国で業務を展開し、国を超えてのイノベーションの創出を実現
一例として、2017 年より、 ICU患者向けの AI 予測ソリューションの実証をスペインにて実施。日本で採用した外国籍女性社員が活躍中。
2.労働環境の改善、生産性の向上
- 社員一人当たりの年間総労働時間の削減:2007年 2,066 時間 → 2016年 1,910 時間
- 労働生産性の向上:2014年度 約 36,000 円 / 時間・人 → 2016年度 約 40,000 円 / 時間・人(11% UP)
- 有給休暇取得率の向上:2013年 82.9% → 2016年 91%に上昇、日本企業平均を上回る水準を達成
3.女性活躍推進
- 女性管理職者数の増加:2008 年 55 人 → 2016 年 135 人
- 管理職層への昇格率の男女差:ほぼ無しへ改善
- 育児休職からの復職率および復職者数:2010 年 92%、40人 → 2016 年 98%、140人
- 女性採用比率:10 年以上に渡り、30%超を維持
4.社会的な認知・評価
- 2009年「第3回父親が子育てしやすい会社アンケート」最高位の3つ星を受賞
- 経済産業省「2013年度 ダイバーシティ経営企業 100 選受賞」
- 経済産業省「平成28年度 準なでしこ銘柄」選出
- 厚生労働省「えるぼし」認定、「新くるみん」認定
- 総務省「テレワーク先駆者百選」選出
- DJSI(DowJones Sustainability Index)におけるWorldIndex に選定
- PRIDE 指標 2017においてゴールドを受賞
DJSI(Dow Jones Sustainability Index)とは
米国ダウ・ジョーンズ社とスイスのSAM(Sustainable Asset Management)が選んだESG投資指標
PRIDE 指標とは
任意団体「work with Pride」が策定した、性的マイノリティに関する取り組みの評価指標
ダイバーシティ経営をどのように進めたの?
それでは、各取り組みをどのように進められたのかを見ていきましょう。
新たな働き方の模索~導入
- 2000年頃から、「IT革命」の進展を背景に、ITを活用した「新しい働き方」を模索
- 2005年、グループビジョン「Global IT Innovator」を発表し、その実現のために「ワークスタイル・
イノベーション」宣言を掲げる - 2006年、新しい働き方である「テレワーク」のトライアル開始
- 2008年より、テレワークを本格稼働し、フレックス制度など柔軟な勤務形態の対象者を拡大
- テレワークの導入により、仕事と子育てを両立できる社員が増加し、生産性が向上
取り組みの本格稼働
- 2008 年、役員直轄の「ダイバーシティ推進室」を設立、ダイバーシティ推進を本格的に開始
- 社内外に広く同社の取組を発信するため、外部の認定・表彰制度に積極的に応募
- 女性社員比率が 2001 年の約 7%から 2011 年には約 16%まで上昇
- 2012年、女性の監査役を社外から招聘し、取締役会の多様化を推進
多様な人材の活躍・登用へ
- 2013年、新「Group Vision」を策定し、さらなるダイバーシティ推進について明記
- 2013年より、女性社員を対象にキャリア形成について考える機会を提供(マインドセット研修、社内ロールモデルによる講演など)
- 女性管理職の経歴を社内サイトに掲載し、女性社員向けメンタリングを実施
- 2015年より、女性管理職比率の改善に向けて、女性向けキャリア研修をさらに充実
- 2016年、「女性活躍」「労働時間」についての KPI を設定、公表
- 2016 年度より、LGBT 等性的マイノリティの社員への制度適用拡大(結婚、忌引の特別休暇取得、慶弔金の付与)
ビジネスのグローバル展開による多様化
- グローバルカンファレンスを年間 2 回開催、グローバル戦略の理解・浸透を促進
- 管理職向けグローバル人材育成研修、2016年度には約80名が参加
- 現場の若手社員向け海外研修制度、約50名が参加
- 実際に海外の開発チームメンバーとして勤務する研修、2018年2月には約130名の社員が海外勤務
- 2017年、初の外国籍本部長が誕生し、ダイバーシティの社内への浸透度を加速
自社の強みである ITを活用したテレワークを発端に、働き方改革と多様な人材の登用を推進し、生産性向上・業績向上に繋げていったことがよく分かりますね。
まとめ
今回は、『平成29年度 100選プライム』受賞の「株式会社エヌ・ティ・ティ・データ」さんをご紹介しました。
日本全体の課題に対して新しい価値を提供した事例として、参考になりますね。
こちらの 平成29年度ベストプラクティス集(経済産業省 経済産業政策局 経済社会政策室)で詳細が確認できます。
ダイバーシティ経営について知りたい方はこちらの記事もどうぞ!