多様性がもたらす新しい視点!ドイツ語圏の「構造化・仕組化」マネジメントとは?

異文化理解-6次元モデル、7つのメンタルイメージなど

「組織」と聞いて、どんな言葉を思い浮かべますか?

「目標」「チーム」「リーダー」「ルール」「管理」「話し合い」などなど、さまざまな答えが出てくることでしょう。

他の人の答えを聞いたら、「えっ、そんな言葉を思いつくの?」と感じることもあるかもしれません。

人間は、自分が生まれ育った環境の”常識”の影響を、無意識に、少なからず受けています。

自分は「そんなの当たり前!」と思っていても、他の人にとっては違うことがある。

自分は「これが正しいやりかた」と思っていても、別のやり方の方がうまくいくこともある。

互いの違いに気づき、受け入れることが、多様化が進む世界での円滑なコミュニケーションへの第一歩です。

その助けのひとつとなるものが、オランダの社会人類学者 ホフステード博士による『6次元モデル』です。世界の国民文化を分析し、モデル化したものです。

さらに、6次元モデルを元に、傾向が似ている国々まとめてグルーピングしたものが、オランダの社会学者Huib Wursten氏による『7つのメンタルイメージ』です。

今回は、『7つのメンタルイメージ』のうち、主にドイツ語圏で見られる『 Well- oiled machine:油のきいた機械 』モデルに焦点を当てていきます。

異なる文化の価値観や考え方を知り、「こういう考え方もあるのか」という気付きを、ビジネスやマネジメントに役立ててください。

※今回の記事は、Huib Wursten氏の『Mental images of culture A perspective to understand misunderstandings In politics, business, religion & …』を参考にまとめています。

『 Well- oiled machine:油のきいた機械 』モデルとは?

まずは、Well- oiled machineモデルの基本定義を確認していきましょう。

主な該当国

ベルギー、オーストリア、ドイツ、チェコ、ハンガリー、スイス(ドイツ語圏)

特徴

  • PDI(権力格差):低い =「権力格差を受け入れにくい、平等を求める」
  • IDV(個人主義):高い =「個人主義が強い」
  • MAS(男性性):高い =「競争、成果、仕事中心」
  • UAI(不確実性回避):高い =「”石橋を叩いて渡る”」

アメリカ、イギリスなどのContest(競争)モデルと似ています。(最初の3つの傾向は同じ)

異なるのは4つ目の不確実性回避です。Contestモデルが不確実なことを受け入れリスクを取るのに対して、Well- oiled machineモデルは、規律をもって不確実性を抑制する傾向があります。

Contestモデルについてはこちらを参考にしてください。

キーワード

構造化、仕組化、標準化、自主性、規律、秩序、計画、明確であること、専門性への高い評価、演繹的、行動する前に考える

Well- oiled machine モデル を理解する3つのポイントとは?

次に、 Well- oiled machineモデル の考え方や価値観を見ていきましょう。

1. 組織や仕事に関する前提

中心となる価値観は?

「構造化・仕組化」への内なる強い欲求

”事前にきっちり決める” ”仕組化する” ことに対して強いこだわりがあります。

組織に対する考え方は?

「自主性」と「専門性」

自主性高く、個人で業務にあたることを好みます。ただし、業務分掌や”遂行”の定義が明確であることが条件です。

また、専門性を重視するため、リーダーには専門家としての実績や深い知識、解決策提示力を求めます。

専門性への尊重の現れとして、例えば、予期せぬことや問題が起きたらすぐにすべきことは、組織上の”上司”とは限らず、「その分野の権威に相談する」こと。権力格差が低いこととも関連した発想ですね。

2. 適しているマネージメントスタイル

適しているマネジメント方法は?

「明確な定義」での「権限譲渡」+「厳密な計画性」

第一に、組織構造や意思決定のプロセスが明確であることが必須です。事前に業務分掌を厳密にすり合わせ、合意したうえで権限委任するかたちが適しています。

業務を進めるにあたっては、事前の計画が極めて重要です。方針や工程や手順を事前にはっきりと定め、ひとりひとりがルールを順守することが求められます。

ただし、途中で不測の事態が起き、計画の見直しが必要と判断されたら、”不測の事態を再び起こさないため”の明確な基準を反映した、「より良い計画」を策定することとなります。

「変化に対応する」というより、あくまで「状況をコントロールする」という主旨であることが、不確実性回避が高い傾向を表しています。

モチベーションの元は?

まずは、仕事の熟練や専門家としての評価が大きなモチベーションの元です。

そして、事前合意した業務内容について「あらかじめ計画された通りの結果が出たか」 を評価されることを求めます。

反対に言うと、「事前に言っていないことであれこれ評価する」のはかなり嫌がられそうですね。

また、仕事の途中で口出しすることや細かい管理も、モチベーションを下げる原因となります。

3. コミュニケーションの方法は?

個人主義であるため、直接的なコミュニケーションが一般的です。あまりくだけ過ぎず、論理的でフォーマルな話し方が好まれます。

注意点として、Machineモデルは個人の自主性を重んじますが、「規律と秩序の中での自主性」という位置づけになります。

つまり、「なんでもはっきり伝える」ことが良いというわけではなく、「ルールを守ったうえでの自由」であったり「取り決めたことを遂行するうえでの自主性」であるということです。

また、全体の秩序を保つために、例外はすぐに全体還元して計画や仕組を再構築することが求められます。例外を放っておく、後から伝える、その場しのぎの対応をする、などは大きなマイナスです。

フィードバックや意見を伝える時には、その前提を踏まえたコミュニケーションが必要です。

まとめ

今回は、『7つのメンタルモデル』のひとつ、 『 Well- oiled machine:油のきいた機械 』モデルの特徴をご紹介しました。いかがでしたでしょうか?

このような分析は全体傾向であり、もちろん個人差もありますが、「こんな考え方もあるのか!」という気づきを得るきっかけになりましたら幸いです。

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