「ダイバーシティ」って、結局何なの?!
最近よく耳にしますよね、「ダイバーシティ」。
弊社では、管理職対象のダイバーシティ研修が始まるそうです。
私の所属する人事部を中心に、ダイバーシティ推進チームを立ち上げました。
けど!でも!!
ダイバーシティって、正直、よくわからないにゃ・・・
というあなた。
心配しないでください!
このブログを読めば、2022年日本、なぜダイバーシティなのかが分かります!
まずは、言葉の意味の確認から始めましょう!
「ダイバーシティ」の意味とは?
ダイバーシティ(Diversity)の直訳は、「多様性」です。
年齢、性別、国籍、民族、第一言語、価値観、特性など、さまざまな属性の人が集まった状態 のことですね。
日本では「女性活躍」の文脈で語られることが多いけど、本来は幅広い対象を指すんですね。
そうですね、ダイバーシティ(多様性)には、「デモクラフィー型」と「タスク型」の2種類があると分析されています。
デモクラフィー型ダイバーシティとは
性別・国籍・年齢・言語など、客観的に判別しやすい属性における多様性。
現在日本で推進されているダイバーシティは、女性活躍推進やシニア人材活用、外国人採用など、デモグラフィー型ダイバーシティが主流であると言えます。
タスク型ダイバーシティとは
能力・経験・知識・価値観など、個人が有する無形の多様性。
タスク型ダイバーシティが高いと、”知の組み合わせ”によるイノベーションが起きやすいと言われています。
そして新たに注目されているのが、個人内多様性(イントラパーソナル・ダイバーシティ)です。
個人内多様性(イントラパーソナル・ダイバーシティ) とは
一人の個人が、多様な経験と幅広い知見を有する多様性。異なる業界・業種での就業経験、複数の国での教育経験など。
個人の多様性により組織の多様性も促進され、イノベーション創出の可能性を高めると言われています。
企業内起業、副業の許可などは、個人内多様性を促進する動きと言えます。
なるほど、ダイバーシティ推進の取り組みをする時には、どれを高める狙いなのかを明確にすることが大事ですね。
あわせて取り上げられる以下の言葉も、簡単にご紹介しておきます。
ダイバーシティ・マネジメント
企業の競争力を高めるため、ダイバーシティの考え方を経営に戦略的に取り入れること。
経済産業省では、「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」と定義しています。
ダイバーシティ&インクルージョン(Diversity & Inclusion / D&I)
多種多様な存在が互いの違いや個性を認め合い、能力を発揮すること。
インクルージョン(Inclusion)という単語は「受容」という意味です。
最近は、D&Iを促進する要素、「Belonging」に注目が集まっています。
ダイバーシティの歴史と変遷
いよいよ流れを見ていきましょう。「ダイバーシティ」がイメージしやすくなりますよ!
1960~1970年代:米国での人権運動
ダイバーシティという考え方は、元々は1960年代のアメリカで始まりました。人種差別、男性優位社会、といった人権面での不平等を解消するための運動が発端です。
1965年には米国雇用機会均等委員会(EEOC)が設置され、雇用差別に対する訴訟が増加するとともに、ダイバーシティという考え方が米国内で徐々に認知されるようになりました。
しかし、多くの企業にとってダイバーシティは「多額の賠償金を払わないように注意すべきこと」であり、「リスクマネジメント」の範疇に過ぎませんでした。
1980年代:CSRとしてのダイバーシティ
1980年代になると、企業の社会的責任(CSR: Corporate Social Responsibility)としてダイバーシティを取り入れる企業が注目されるようになりました。
ただしその傾向は、「女性活用に積極的」「人種や性別関係なく雇用」というイメージで企業ブランドを高めるなど、ブランディング施策のひとつだったと言えるでしょう。
この頃は、まだまだ形式的なものだったのね。
1980年代:経済市場と労働力のグローバル化
1980年代は、アメリカ企業の多角化戦略が行き詰まり、世界的競争力が低下した時代でもありました。日本を始めとする新興国が市場で存在感を増す一方、スケール重視で膨れ上がった米国巨大企業の収益性が急激に悪化していたのです。
そこで米国では大規模な経営改革が次々と行われ、アウトソーシングやオフショアリングの活用、生産拠点の海外シフト、安価な労働コストの実現、現地需要の取り込みなどが実行されました。
つまり、米国以外の人(企業)とビジネスをし、現地で製造し、世界に商品を売るための経営戦略が必要になったわけです。
このように、経済市場と労働力のグローバル化が、米国企業のダイバーシティへの意識を加速させることになりました。
1980年代後半~:米国に大きな衝撃を与えた「Workforce 2000」
1987年に米国で発行された「Workforce 2000」という労働白書があります。
米国労働省とハドソン研究所がまとめたもので、「21世紀のアメリカの労働力人口構成予測」に関するレポートは米国企業に大きな衝撃を与えました。
なぜなら、以下のような予測内容だったからです。
● 今後、米国の労働力は急速に高齢化・女性化していく
● 2000年までの新規労働力のほとんどは、①米国生まれ白人女性 ②マイノリティ人種 ③移民 が占める
● (当時労働力人口の中心を占めていた)白人男性の新規参入者の割合が、47%から15%まで急減する
● つまり、2000年の米国労働人口においては、白人男性がマイノリティになる
このレポートにより、これまでダイバーシティを懐疑的に受け止めていた企業も、経営戦略を大きく見直さなければならないことを認識するようになりました。
データを突き付けられて、いよいよ焦りだしたというわけですね。
1990年代:ダイバーシティマネジメントの本格化
1990年代になるとダイバーシティへの意識がさらに広まり、大規模な集団訴訟も発生するようになりました。
モルガン・スタンレー、スミス・バーニー、メリル・リンチなど、名だたる大企業が高額な和解金を支払うこととなったのがこの頃です。
企業は更なる状況改善を迫られ、ダイバーシティという概念を織り込んだ経営戦略の研究が進みました。
ですが、「訴訟を起こされないように」といったネガティブな動機に端を発している企業もまだまだ多く、トップダウンでかたちだけ、ということも少なくありませんでした。
しかし1990年代後半になると、ITを始めとした新規産業の台頭により、「多様な人材を活かす」というポジティブな意味への転換がいよいよ進んでいきました。
2000年代~:ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)へ
2000年代に入ると、ITの急激な発展や新興国の経済成長などにより、経済や市場のグローバル化・ボーダレス化がさらに進みました。
優秀な人材はますます貴重化し、国を超えて情報を手に入れ、「多様な人材がいる」という状態だけの組織には留まりません。
企業には、多様な人材が活躍するための環境を積極的に提供する姿勢や、「雇い主と労働者」を超えた共存共栄の視点が求められるようになりました。
これが「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I/ Diversity & Inclusion)」です。インクルージョン(Inclusion)は英語で受容という意味があります。
違いを認め合い、活かし、イノベーションを起こすこと、価値を作り出していくことが、現代の経営戦略の重要な要素になってきたのです。
2020年からのCOVID-19の影響でビジネスの変化が加速し、ダイバーシティの重要性はさらに高まっていますね。
「映画で見る米国ダイバーシティ」の記事で、この変遷をより具体的にイメージにできるにゃ!
日本におけるダイバーシティ
続いては、日本の動きを見ていきましょう。1990年代からのスタートです。
1990年代~:ダイバーシティへの意識の高まり
日本では、1980年代までダイバーシティに関する議論はほとんど起こりませんでした。
なぜなら、地理的環境や歴史的経緯などから、終身雇用制度や年功序列といった雇用関係が根付いており、「同質性」が企業経営の強みである時代が続いていたからです。
しかし1990年代以降、日本でもダイバーシティの重要性が提起されるようになりました。以下のようなことが、急速に進行しているからです。
- 少子高齢化と労働力人口の減少
- ビジネスのグローバル化
- 産業構造の変化
- 個人の価値観の多様化
ふむふむ、人事制度の整備を急ぐ必要がありそうですね・・・
少子高齢化と労働力人口の減少
日本では、他の国と比較しても急速に少子高齢化が進行しています。
総務省の発表によると、生産年齢人口(15歳~64歳)は1995年をピークに減少に転じており、2015年の生産年齢人口は7,629万人まで減少しています。そして2040年には、5,787万人にまで減少すると見込まれています。
実際に社会に出て稼ぎ手となるのは20歳過ぎからであること、育児や介護や病気など何らかの事情で働けない方もいることを考えると、2040年時点の稼ぎ手は5,000万人程度と見込めるでしょう。
5,000万人で1億人の人口、つまり、1人の社会人が2人分の生活を支える、ということです。
また、65歳以上人口が総人口に占める割合である「高齢化率」は、2020年時点で29%に達し、2040年には36%に達する見込みとなっています。つまり、3人に1人が65歳以上、ということです。
労働人口が減少する一方、社会保険などの公的負担は増加の一途。
国民所得に対する医療費の比率は、2018年時点で10%を超えています。
ビジネスのグローバル化、産業構造の変化
一方、ビジネスの動向はというと、ITの発展や新興国の経済成長などにより、産業構造の変化やビジネスのグローバル化・ボーダレス化が急激に進んでいます。
このような変化に対応できる人材の確保育成の重要性が叫ばれているわけですが、経済産業省の発表によると、2030年で最大約79万人のIT人材不足が起きるとの調査結果が出ています。
ですが日本では労働人口の減少が進んでおり、つまり、これまでのビジネスの中心人材(日本語を第一言語とする日本人、60歳までの男性)だけでは経営が立ち行かなくなるわけです。
そのような中、女性や外国籍人材などの活用が注目されるようになり、日本でも経営戦略にダイバーシティの考え方を取り入れる企業が増えてきたのです。
日本はリスキリングへの対応も遅れていると聞いたにゃ
世界のCEOの人事戦略については、こちらの記事を参考にしてね。
「働くこと」に対する価値観の変化
情報・人・ビジネスのグローバル化・ボーダレス化により、日本社会の同質性が低くなることで、働き方や人生に対する個人の価値観も多様化してきました。
内閣府が発表した「国民生活に関する世論調査(令和元年調査)」では、「働く目的」に関する意識を見ることができます。
年齢別に見ると以下のような傾向になっており、かつての「会社人間」という言葉に表されるような働き方が薄れてきていることがわかります。
●「お金を得るために働く」と答えた人の割合は18~29歳から50歳代が高い。
●「社会の一員として、務めを果たすために働く」「生きがいをみつけるために働く」と答えた人の割合は60歳代、70歳以上で高い。
確かに、仕事とプライベートのバランスを重視する社員が増えてきました。
仕事以外の勉強や習い事をする社会人も増えているにゃ!
「男女の役割」に対する意識の変化
内閣府の「令和2年版男女共同参画白書」では、以下のような変化も見ることができます。
共働き世代の増加
● 平成9(1997)年以降は、共働き世帯数が「男性雇用者と無業の妻から成る世帯」を上回っている。
● 特に平成24(2012)年頃からその差が急速に拡大。
「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」という考え方に関する意識
● 平成28(2016)年の調査で、反対する割合が賛成する割合を上回った。
● 直近の令和元(2019)年の調査では、女性で63.4%、男性で55.7%が反対している。
私も夫と共働きです。家事も分担していますよ。
女性活躍推進に優れた企業を選定する「なでしこ銘柄」など、ESG投資も注目を集めていますね。
日本のダイバーシティのこれから
このように、日本における労働環境や働き方に対する考え方は変化し、多様化しています。この傾向は、2020年からのコロナの影響で加速したと言えるでしょう。
企業が生き残っていくためには、この流れを理解し、多様なバックグラウンドを持つ人材が働きやすい環境を作る経営戦略が必須となります。
最も大切なことは、競争力強化という目的意識を持って、戦略的に取り入れることです。
「採用のためにダイバーシティを前面に出す」というイメージ戦略に偏ると、入社後のギャップにより離職率が高まることも。気を付けてくださいね!
「女性登用」だけでなく、ダイバーシティを構成する要素は様々。自社の強み、新規事業の方向性などにより、「推進すべき多様性」を見極めてくださいね。
こちらの記事も参考にしてほしいにゃ!