D&IからDIBへ
Diversity is being invited to the party. Inclusion is being asked to dance.
ダイバーシティはパーティに招待されること。インクルージョンは、そこでダンスに誘われること。
Vernā Myers
これは、米国のダイバーシティ・コンサルタント Vernā Myersの言葉です。
Diversity=招待されてそこに「いる」こと=多様な人がいる「状態」「事実」
Inclusion=ダンスに誘われること=存在を認められて「行動」「参画」すること
D&Iの概念を分かりやすく例えていますね!
そして最近は、この2つに“Belonging”を加えた、”DIB”が語られることが多くなってきました。
今回は、ダイバーシティの発展形、DIB(Diversity, Inclusion and Belonging)についてご紹介します!
ダイバーシティを基礎から確認したい方はこちらをどうぞにゃ!
”Belonging”が意味することとは?
Belongingとは、直訳すると「所属」「帰属意識」「親密な関係」となります。
従業員フィードバックソフトウェアのCulutre Amp(本社:オーストラリア)が発表した『6 ways to foster belonging in the workplace』では、Belongingを以下のように定義しています。
Belonging is the feeling of security and support when there is a sense of acceptance, inclusion, and identity for a member of a certain group or place. It’s the basic fundamental drive to form and maintain lasting, positive, and significant relationships with others. At the workplace, these relationships can be extended to the organization and its values and to the work itself.
Belongingとは、あるグループや場所のメンバーとして、受け入れられ、参画し、自他ともに認識している状態のもとで、安全とサポートを感じていることである。それは、他者と恒久的でポジティブで意義深い関係を形成し維持するための、基本的かつ根本的な欲求である。職場では、このような関係性は組織とその価値観、また仕事そのものにも影響を与えうる。
6 ways to foster belonging in the workplace – Culutre Amp (訳はブログ管理人による)
つまり、Diversity, Inclusion, Belongingの関係性は、以下のようになりますね。
Diversity=招待されてそこに「いる」こと=多様な人がいる「状態」「事実」
Inclusion=ダンスに誘われること=存在を認められて「行動」「参画」すること
⇩ ⇩ この環境のもとで ⇩ ⇩
Belonging =(周囲の支えがあるので)安心してダンスができること=「サポート」があるので「安心」して能力が発揮できること
単なる「所属感」ではなくて、心理的安全や信頼を感じることなんですね!
「基本的かつ根本的な欲求」・・・
こんなに重要度が高いのに、実はあまり認識されていない要素かもしれませんね。
そうなんです。かつての日本では企業が”社員の一生を預かる”終身雇用制が一般的で、社員にとっても企業に所属感や安心感を持つことは自然なことでした。
ですが、産業構造の変化や景気の停滞などによりそれが崩れていくと、Belongingが不足しやすい状況が生まれました。
年功序列の見直し、成果主義や年俸制の導入、雇用形態の多様化などですよね。
転職による人材の流動化も進んでいますね。
なるほど・・・ただでさえ不安なところで「多様性」を進めると、違う属性の社員間で摩擦が起きたり、疑心暗鬼になったりしてしまいそうですね。
その通りです。ですから、D&Iの取り組みを進める時には、社員のBelongingを高めることも並行するのがいいですね。
”Belonging”のメリットとは?
同じく『6 ways to foster belonging in the workplace』に、このような記載があります。
In our Diversity, Inclusion and Intersectionality Report 2018 research we found that belonging has a strong correlation to commitment and motivation at the workplace, directly translating to employee retention, pride, and motivation.
『Diversity, Inclusion and Intersectionality Report 2018』の調査で、“belonging”が職場でのコミットメントやモチベーションと強い相関関係があり、従業員の定着、プライド、モチベーションに直結することが分かった。
6 ways to foster belonging in the workplace – Culutre Amp (訳はブログ管理人による)
Belongingは、組織に対する愛着や信頼、仕事への意欲を高めるということですね。
そういう環境では、D&Iの取り組みを進めやすくなるということでしたよね。
はい、そうですね。 Belongingは、D&Iの促進剤であり組織の潤滑油 なのです。
DIBがうまく相互作用して回ると、多様な人々が安心して仕事に励み、職場を愛し、パフォーマンスが高まっていくのですね!
”Belonging”を高める方法とは?
『6 ways to foster belonging in the workplace』では、以下の6項目を”Six approaches you can use to help people feel they belong” として紹介しています。
Six approaches you can use to help people feel they belong
(人々がbelongを感じる助けとなる6つの方法)
- Know how you’re tracking(測定方法を理解する)
- Social bonds(社会的絆)
- Trusting relationships(信頼関係)
- Be intentional about inclusion(インクルージョンについて意図的であること)
- Bring belonging out into the open(belongingを共有する)
- A shared vision makes all the difference(ビジョンの共有は大きな変化をもたらす)
それぞれの内容を見ていきましょう!
1.Know how you’re tracking(測定方法を理解する)
Collecting information about engagement at your organization using an Employee Engagement survey will allow you to identify strengths and areas for improvement across the organization. (snip)With this information on hand, you’ll be able to take action and measure progress.
従業員エンゲージメント調査をして情報を集めることで、組織における強みと改善すべき領域を特定することができます。(中略)この情報を入手することで、行動を取り、進捗を評価することができるでしょう。
6 ways to foster belonging in the workplace – Culutre Amp (訳はブログ管理人による)
ふむふむ、まずは調査して情報を集めることからですね。
それにより、組織の強みと改善すべき領域を特定するのですね。
そして具体的アクションを起こし、進捗評価へと進みます。
2.Social bonds(社会的絆)
Bringing people together can provide an environment where people feel they belong. (snip)Wilder and Thompson found that people seemed to form favorable views towards people with whom they spent time, even if they were people they previously disliked or had stereotyped unfavorably.
人々を集めることは、belongを感じる環境を与えうる。(中略)WilderとThompsonは、人々は時間を共に過ごす人たちに対して好ましい印象を持つということを発見した。以前は好きではないと思っていたり、ステレオタイプな悪印象を持っていた人たちに対してでも。
6 ways to foster belonging in the workplace – Culutre Amp (訳はブログ管理人による)
心の繋がりをつくるためには、交流の機会を意図的に作ることが効果的なのですね!
例えば以下のような点を確認すると、どのような機会が作れそうか、ヒントを得られます。
- チームがどのように構成されているか
- 日々の業務以外の課題を解決するために、グループがどのように集まっているか
- 交流の機会をつくるため、オフィスがどのようにデザインされているか
- リモートワークのチームが、どのように、そしてどこで集まっているか
機能している交流を観察することが、ヒントになるんですね!
3.Trusting relationships(信頼関係)
Developing belonging should not only happen amongst peer groups. Those who have a trusting relationship with a mentor (or manager) are better able to take advantage of critical feedback and other opportunities to learn.
belongingを育てることは、仲間内だけで起こるものではない。メンター(またはマネージャー)と信頼関係がある従業員は、批判的なフィードバックやその他学びの機会をより有効に使うことができる。
6 ways to foster belonging in the workplace – Culutre Amp (訳はブログ管理人による)
普段一緒に仕事をしている同僚だけでなく、メンターやマネージャーとの信頼関係が有効なのですね!
具体的な取り組みとして、以下のような例があります。
- 公式または非公式なメンタープログラムを設定する
- 1:1ミーティングから最良の結果を得るため、メンターやマネージャーに対してコーチングを行う
- エンゲージメント調査結果について、メンターやマネージャーがチームで議論することを奨励する
リモートワークで1on1ミーティングの機会が増えているから、その効果を高める取り組みは重要だな。
4.Be intentional about inclusion(インクルージョンについて意図的であること)
Unless people consciously try to be inclusive, exclusion can occur by accident. (snip) Now and again, check in and ask yourself, “Am I making others feel they belong where we are?”
人々がインクルージブであろうと意識し続けなければ、排除はふとしたことで起きうる。(中略)改めて、自分に問いてほしい、「自分は、他の人々がbelongを感じられるようにしているだろうか?」と。
6 ways to foster belonging in the workplace – Culutre Amp (訳はブログ管理人による)
誰もがステレオタイプや偏見を無意識に持っています。多くは育った環境などで自然に身についたもので、簡単に変わるものではありません。
だからまずは、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を自覚するのですね。
「自分には偏見なんて無い」なんて思っていると、新しい視点を得られませんね。
そうなんです。新しい取り組みを習慣化するためには、ひとりひとりが継続的に意識する努力が必要です。
「排除」を行わないための具体的な方法として、以下のような例があります。
- プロジェクトへの協力を依頼する時は、グループミーティングの場ではなく、個別に書類を共有して行う。
- グループミーティングでは、全員が参画する時間を確保する。例えば、全参加者が自分のアイディアを付箋に書き、席を立って自分自身でそのアイディアをボードに貼るようにする。
- 決定がどのようになされるかを明確にし、選ばれた数名による”オフライン”での決定を行わない。
5.Bring belonging out into the open(belongingを共有する)
Hearing frank and positive stories from all job levels can powerfully influence people’s sense of belonging. Understanding another person’s story – the broader aspects of their life, such as hobbies or outside interests, concerns or hardships – can dissolve interpersonal barriers.
あらゆる職層の人々から気軽で前向きな話を聞くことは、人々のbelongingの気持ちに強力に影響する。ある人の話を理解すること ―その人の人生のより広い面、例えば趣味や興味があること、心配事や苦労話など― は、人との間の障壁を取り去ってくれる。
6 ways to foster belonging in the workplace – Culutre Amp (訳はブログ管理人による)
Narrative Power(物語の力)が共感に大きな影響を与えることは、数々の文献で言及があります。
個人的な話を聞いて、「こんな人なんだ」「こんな悩みがあるんだ」と思うと、親近感や好感度が上がりますね。
まさにそれが物語の力ですね!
職場で”物語”を促進する方法として、以下が挙げられています。
- 「How might we(どうやったら~できうるか?)」セッションで個人の体験や考えを共有する。
- 経営陣が繰り返し語る。組織内で共有されている話を何度も語ることは、belongingの重要性を高める。
- ストーリーテリングは、人々がbelongを感じる環境作りに適したコミュニケーションの手法である。リーダーが効果的に話をできるようトレーニングすることの意義は高まっている。
「How might we」セッションについては、2014年のHarvard Business Reviewで取り上げられているにゃ!
6.A shared vision makes all the difference(ビジョンの共有は大きな変化をもたらす)
Shared purpose, values, and goals can significantly contribute to a person’s feeling of belonging. People feel a sense of belonging when they believe the work they do is significant.
目的、価値観、ゴールを共有することは、人々の belonging の感情に明らかに寄与する。自分たちの仕事が有意義であると信じている時、人々は belonging の気持ちを持つ。
6 ways to foster belonging in the workplace – Culutre Amp (訳はブログ管理人による)
自分が属する組織は、何を大事にして、どこを目指しているのか。
自分の仕事は何に役立っているのか。
これらが明確だと、人は安心して仕事に打ち込めるのですね。
ビジョンを「壁に掛けた標語」で終わらせないことが大事ですね。
具体的な取り組み例をご紹介します。
- 組織の目的と価値観に定期的に立ち戻り、組織のあり方や向かっている方向に反映されていることを確認する。
- そのビジョン、ゴール、価値観がなぜ重要なのかを、リーダーたちが理解するようにする。リーダーたちが「歩くように語る」時、組織はより成功に近づく。
- 従業員ひとりひとりが、どうやって組織に貢献するかを設計し理解することができるよう、時間を使う。
まとめ
今回は、ダイバーシティの発展形、DIB(Diversity, Inclusion and Belonging)についてご紹介しました。
日本でのD&Iへの取り組みはまだまだ発展の余地があり、各社試行錯誤が続いていることと思います。
”Belonging”の概念は、日本的経営が得意としてきた要素とも言え、日本でダイバーシティ経営を推進するうえでよい潤滑油となるのではないでしょうか。
ダイバーシティ経営の進め方で悩む皆さまはぜひ参考にしてください。
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