『ホフステードの6次元モデル』とは?これを見れば世界の国民文化がズバリわかる!

ダイバーシティ- 基礎知識など

ホフステードの6次元モデルとは?

仕事や留学などで多国籍な環境で過ごした経験がある方なら、物事の進め方や意見の伝え方、人生における価値観などで、「国民性の違い」を感じたことがあるでしょう。「日本人は集団主義」「日本人は慎重」のような指摘も耳にしたことがあると思います。

このような「国民性」「文化」という極めて曖昧な概念を研究しモデル化したのが、オランダの社会心理学者 ヘールト・ホフステード博士です。

ホフステード博士の研究の基礎になっているのは、1967年から1973年にかけて実施されたIBMでの調査です。約116,000人、72ヶ国のIBM社員を対象に行われたこの調査により、同じ企業の社員であっても出身国により大きな違いがあることがわかりました。

ホフステード教授はこの研究を深め、国民文化の違いを相対的に比較できる指標を作り出しました。

それが『ホフステードの6次元モデル』(The 6 dimensions model of national culture)です。

このモデルでは、各国民の価値観を6つの次元(ものさし)で表しています。もちろんあくまでも全体指標であり、個人レベルで見ると個々の高い低いは存在します。ですが先ほどの「日本人は集団主義」のように”なんとなく言われている”ことも、指標として客観的に比較することで、世界の中での位置づけが見えてきます。

このモデルで各国の価値観や考え方の傾向を知ることで、グローバル環境下でのビジネスの進め方やダイバーシティ・マネジメントなどに活かすことができるのです。

ダイバーシティ(多様性)についてはこちらの記事もどうぞ!

ホフステードの6次元モデルの各指標

それでは6つの指標を具体的に見ていきましょう。各指標は0から100の数値で表され、50が平均、50より上に行くほどその傾向が強い、下に行くと傾向が弱い、となります。

PDI:Power Distance(権力格差)

This dimension expresses the degree to which the less powerful members of a society accept and expect that power is distributed unequally. The fundamental issue here is how a society handles inequalities among people.

People in societies exhibiting a large degree of Power Distance accept a hierarchical order in which everybody has a place and which needs no further justification. In societies with low Power Distance, people strive to equalise the distribution of power and demand justification for inequalities of power.

Hofstede Insights – THE DIMENSIONS OF NATIONAL CULTURE

社会において権力が弱い人が、権力が不平等に分配されいることを当然のことと受け入れる度合い。

PDIのスコアが高いとヒエラルキー(階層、階級)を受け入れ、低い場合は平等さを求め、不平等さに対する正当な説明を要求する傾向があります。

日本の権力格差スコアは?

日本はスコア54、65ヶ国中の順位は43位です。 (以外なことに?)ほぼ平均値で、アジア地域では最も権力格差が小さい国となっています。

権力格差が大きい国TOP3

1位 マレーシア:スコア100

1位 スロバキア:スコア100

3位 フィリピン:スコア94

  • 上下関係があるのは当たり前。社会的ランクの高い人と低い人は平等ではない。
  • 上司、教師、政治家など「権威ある人」は、人間としても優れているべきと考える。
  • 「権力者は正しい回答を持っている」ことを期待する。
  • マネジメントで有効なパワーは、自分の「社会的権威」を使いこなす力。

権力格差が小さい国TOP3

1位 オーストリア:スコア11

2位 デンマーク:スコア18

3位 ニュージーランド:スコア22

  • パワーの不平等はできる限りないほうが良いと考える。
  • 上下の関係は存在するが、目的を果たすために必要な便宜的のもの。
  • 上司、教師、親などに「年齢や社会的ランクが上=人間的に優れている」とは期待していない。
  • マネジメントで有効なパワーは、人々をやる気にさせる「影響力」。

IDV:Individualism VS Collectivism(個人主義 VS 集団主義)

The high side of this dimension, called Individualism, can be defined as a preference for a loosely-knit social framework in which individuals are expected to take care of only themselves and their immediate families.

Its opposite, Collectivism, represents a preference for a tightly-knit framework in society in which individuals can expect their relatives or members of a particular ingroup to look after them in exchange for unquestioning loyalty. A society’s position on this dimension is reflected in whether people’s self-image is defined in terms of “I” or “we.”

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このスコアが高いと、結束力のゆるい社会体制を好み、自分自身および近親者のみを保護対象と考えます。

反対にスコアが低い場合(=集団主義)は、結束力の強い社会体制を好み、所属組織への絶対的忠誠と引き換えに保護されることを期待します。

自己を語るときに『”I”(私)を使うか”We”(私たち)を使うか』の選択に、このスコアの反映を見ることができます。

日本の個人主義スコアは?

日本はスコア46、65ヶ国中の順位は30位です。これも意外にほぼ平均で、どちらかというと集団主義、という程度です。

個人主義が強い国TOP3

1位 アメリカ:スコア91

2位 オーストラリア:スコア90

3位 イギリス:スコア89

  • 「自分の意見や考えを率直に伝えること=誠実な人間」であると考える。
  • 「意見の衝突は実りある結果に繋がる、だから対立を避ける必要はない」と考える。
  • 親子関係であっても、親も子どもも「個人」。所有物も個人に属する。
  • “I”(私)で育つ。普遍的価値基準。すべての人を同じ価値観でとらえる。
  • コミュニケーションの成立は話し手の責任。コンテクスト(状況)の影響は低い。

集団主義が強い国TOP3

1位 ベネズエラ:スコア12

2位 コロンビア:スコア13

3位 インドネシア:スコア14

  • 面子を潰さない、顔色を伺う、意図を推測することが大切。間接的コミュニケーション。
  • 「集団の調和を保つことが重要、直接的な対立は避けるべきもの」と考える。
  • 所属組織への絶対的忠誠。家族親族で所有物(資産)を共有する。
  • 子どもは”We”(私たち)で育つ。”We”とそれ以外(=内と外)で価値基準が異なる。
  • コミュニケーションの成立は聞き手の責任。コンテクスト(状況)の影響が大きい。

MAS:Masculinity VS Femininity(男性性 VS 女性性)

The Masculinity side of this dimension represents a preference in society for achievement, heroism, assertiveness, and material rewards for success. Society at large is more competitive. Its opposite, Femininity, stands for a preference for cooperation, modesty, caring for the weak and quality of life. Society at large is more consensus-oriented.

In the business context Masculinity versus Femininity is sometimes also related to as “tough versus tender” cultures.

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男性性が高い国が好むのは、「達成」「ヒロイズム(英雄主義)」「自信ある態度」「成功に対する物質的な見返り」。概して競争社会。

一方、女性性が高い国は、「協力」「謙虚」「弱者保護」「人生の質」を大切にする。合意形成を重んじる社会。

ビジネスの文脈では、男性性VS女性性は「タフVS優しさ」と称されます。

日本の男性性スコアは?

日本はスコア95、65ヶ国中の順位は2位です。極めて男性性が強い社会であることが分かります。

男性性が強い国TOP3

1位 スロバキア:スコア100

2位 日本:スコア95

3位 ハンガリー:スコア88

  • 社会的成功を重視。「強い者」「優れた者」が理想。
  • 目標は「必ず達成すべきもの」であり「達成するため努力すべき」と考える。
  • 欠点やミスに対して厳しい。欠点は「修正すべきこと」と考える。
  • 仕事は人生における重要な要素。「働くために生きる」という価値観。
  • 男女の社会的役割を区別する傾向。「男らしい」「女らしい」という表現が使われる。

女性性が強い国TOP3

1位 スウェーデン:スコア5

2位 ノルウェー:スコア8

3位 ラトビア:スコア9

  • 福祉社会が理想。貧しい人、弱い人を助ける。
  • 目標は「全体の方向を示すもの」ではあるが、「必ずしも達成しなくてもよい」と考える。
  • 失敗に寛容な社会。「成功は時の運でもある」と考える。
  • 大切な人と一緒にいる時間を重視。「生きるために働く」という価値観。
  • 男性と女性の感情的な役割が重なり合っている。協力協調を重んじる。

UAI:Uncertainty Avoidance Index(不確実性回避指数)

The Uncertainty Avoidance dimension expresses the degree to which the members of a society feel uncomfortable with uncertainty and ambiguity. The fundamental issue here is how a society deals with the fact that the future can never be known: should we try to control the future or just let it happen?

Countries exhibiting strong UAI maintain rigid codes of belief and behaviour, and are intolerant of unorthodox behaviour and ideas. Weak UAI societies maintain a more relaxed attitude in which practice counts more than principles.

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不確実性回避とは不確実なことや曖昧なことに対する耐性を表します。予測不可能な未来に対して、コントロールしようとするのか、あるがまま受け入れるのか。

この指標が高い社会では、厳格な規則や慣例で考え方や行動を統率し、目新しい行動や考えを受けれいません。

反対に低い社会では、よりリラックスしたやり方で、原理原則よりも実行を重視します。

日本の不確実性回避指数は?

日本はスコア92、65ヶ国中の順位は10位です。「日本人は慎重だ」を裏付ける高さとなっています。

不確実性回避指数が高い国TOP3

1位 ギリシャ:スコア100

2位 ポルトガル:スコア99

2位 ウルグアイ:スコア99

  • 予測不能なことに対してストレスが高く、人生に不安感を感じている。
  • 不安感を取り除くため、形式、規則、慣習などを必要とする。
  • 教師、医師、弁護士など、専門家を信頼する傾向がある。
  • 「正しい答え」を求め、上位者がそれを示すことを期待する。
  • 「トップマネジメント」は「日々のオペレーション管理」を意味する傾向がある。

不確実性回避指数が低い国TOP3

1位 シンガポール:スコア8

2位 デンマーク:スコア23

3位 スウェーデン:スコア29

  • そもそも人生とは不確実なものだと捉えており、ストレスも不安感もあまりない。
  • 規則ややり方に捉われない。成功するためにリスクを取り、失敗を恐れない。
  • 専門家や学者より、常識や実務家を信頼する傾向がある。
  • 「正しい答え」を求めるのではなく、「Out of box thinking(斬新な発想)」と「Trial and Error(試行錯誤)」を重視する。
  • 現場のことは現場に任せる。ルールの運用も臨機応変。

LTO:Long Term Orientation VS Short Term Normative Orientation(長期志向 VS 短期志向)

Every society has to maintain some links with its own past while dealing with the challenges of the present and the future. Societies prioritize these two existential goals differently.

Societies who score low on this dimension, for example, prefer to maintain time-honoured traditions and norms while viewing societal change with suspicion.

Those with a culture which scores high, on the other hand, take a more pragmatic approach: they encourage thrift and efforts in modern education as a way to prepare for the future.

In the business context, this dimension is referred to as “(short-term) normative versus (long-term) pragmatic” (PRA). In the academic environment, the terminology Monumentalism versus Flexhumility is sometimes also used.

Hofstede Insights – THE DIMENSIONS OF NATIONAL CULTURE

あらゆる社会は、「過去からの繋がりを保つこと」と「現在・未来への挑戦をすること」を同時に扱う必要があります。これら2つの優先順位は、社会により異なります。

長期志向スコアが低い社会では、昔からの伝統や規範を維持し、社会の変化を懐疑的に見る傾向があります。

一方、長期志向スコアが高い社会では、より実用的なアプローチを取ります。将来への投資として倹約と努力を推奨します。

ビジネスの文脈では、この指標は「規範的 VS 実用的」と称されます。学術的には、「モニュメンタリズム VS 柔軟性」と表されることもあります。

日本の長期志向スコアは?

日本はスコア88、65ヶ国中の順位は3位です。かなり長期志向が強いことが分かりです。

長期志向が強い国TOP3

1位 韓国:スコア100

2位 台湾:スコア93

3位 日本:スコア88

  • 将来成功するために教育に投資し、他国から学ぶ姿勢がある。
  • 勤勉に働き、結果が出るまで粘り強く努力する。
  • 余暇は重視せず、資源の節約と倹約を心がける。
  • 長期視点で考える。「善悪は時と場合によって異なり、真実は一つではない」と考える。
  • 自己を全体の中の一部と考える。全体像の把握、市場での地位、将来の成長・利益を重視する。

短期志向が強い国TOP3

1位 ガーナ:スコア4

2位 エジプト:スコア7

3位 モザンビーク:スコア11

  • 短期的な損益に焦点が置かれる。自国へのプライドがある。
  • 努力はすぐ結果に結びつかなくてはいけないと考える。
  • 余暇は重要。社会的に消費への圧力が強い。
  • 善悪に対して普遍的な指針があり、「真実は一つである」と考える。
  • 自己を単一の主体として考える。思考が分析的で、まずポイントを理解しようとする。

IND:Indulgence VS Restraint(充足的 VS 抑制的)

Indulgence stands for a society that allows relatively free gratification of basic and natural human drives related to enjoying life and having fun. Restraint stands for a society that suppresses gratification of needs and regulates it by means of strict social norms.

Hofstede Insights – THE DIMENSIONS OF NATIONAL CULTURE

「充足的」とは、人生を楽しみ喜びを得ることに関する、人間の基本的で本能的な欲求を満足させることに対して、社会が比較的寛容であることを表します。

「抑制的」とは、欲求を満たすことを抑制し、厳しい社会規範で規制する社会を表します。

日本の充足的スコアは?

日本はスコア42、65ヶ国中の順位は38位です。やや抑制的傾向があります。

充足的傾向が強い国TOP3

1位 ベネズエラ:スコア100

2位 メキシコ:スコア97

3位 エルサルバドル:スコア89

  • ポジティブ、寛容、自由。
  • 「幸せである」「健康である」と感じる人が多い。
  • 楽観主義的で、「人生はコントロールすることができる」と感じている。
  • 人生を楽しむため余暇は重要。
  • 職場ではポジティブシンキングが奨励される。微笑みがマナー。

抑制的傾向が強い国TOP3

1位 パキスタン:スコア0

2位 ラトビア:スコア13

3位 リトアニア:スコア16

  • 厳しい社会規範によって欲求の充足を抑え、制限すべきだと考える。
  • 「幸せである」「健康である」と感じる人が少ない。
  • 悲観主義的で、「世の中で起きることは自分ではどうしようもできない」と無力感を感じている。
  • 余暇はあまり重要ではない。
  • 職場では謹直で厳格な態度が信用される。微笑は疑惑の目で見られる。

まとめ~さらなる学びへ!

今回は、多様性を表す指標『ホフステードの6次元モデル』をご紹介しました。

“VS”とありますが、どちらが良い悪いという問題ではなく、価値観や考え方が「違う」のだと知ることが大切です。そのうえでどうするか考えることが、多様なバックグラウンドを持つ人々との人間関係を良好にし、ビジネスを円滑に進めることに繋がります。

グローバル環境で働くあなたにとって、何かのヒントになれば幸いです。

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