オランダの社会学者Huib Wursten氏が提唱した『7つのメンタルイメージ』。社会人類学者ホフステード博士の『6次元モデル』を元に、世界各国の文化をグループ化した考え方です。
今回は、『7つのメンタルイメージ』のうち、主にスカンジナビア諸国に見られる『 Network:ネットワーク』モデルに焦点を当ててみていきます。
福祉、教育、政治、スタートアップなど、様々な分野で注目を集める北欧諸国の文化を知り、ビジネスやマネジメントに役立ててください。
『Network:ネットワーク 』モデルとは?
まずは、Networkモデルの基本定義を確認していきましょう。
主な該当国
スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマーク、オランダ、アイスランド
特徴
- PDI(権力格差):低い =「権力格差を受け入れにくい」
- IDV(個人主義):高い =「個人を尊重する」
- MAS(男性性):低い =「共生や人生の質を重視」
- UAI(不確実性回避):平均的 =「極端な規制もリスクもとらない」
キーワード
平等、自立、自治、合意、協調、協働、信頼関係、弱者保護、「強者」や「英雄」に懐疑的、行動する前に考える
Networkモデルを理解する3つのポイントとは?
次に、Networkモデルの考え方や価値観を見ていきましょう。
Huib Wursten氏の『Mental images of culture A perspective to understand misunderstandings In politics, business, religion & …』を参考にまとめています。
1. 組織や仕事に関する前提
中心となる価値観は?
「 Just act normal, that’s crazy enough 」
オランダの格言で、「普通にして、それで十分クレイジーだから」という意味です。
勝ち負けよりも平等と個々の尊重を重んじるので、「勝者」だと自称する人には冷ややかな視線が集まるようです。Contest(競争)モデルと仕事をすることになったら、いったいどうなるのだろう・・・
組織に対する考え方は?
北欧諸国に伝わる「Jante’s Law(ヤンテの掟)」というものがあります。デンマーク生まれの作家アクセル・サンデモーセが書いた小説に登場する架空の村の掟なのですが、「集団に所属すること」の精神を表しているのだそう。
The Ten Rules of Jante
Don’t think you are anything special.
Don’t think you are as good as we are.
Don’t think you are smarter than we are.
Don’t convince yourself that you are better than we are.
Don’t think you know more than we do.
Don’t think you are more important than we are.
Don’t think you are good at anything.
Don’t laugh at us.
Don’t think anyone cares about you.
Don’t think you can teach us anything.
What is Jante’s Law? To really understand Scandinavia, look to Janteloven
な、なんとも謙虚というか控えめというか・・・
”ひとりひとりを尊重する”ので、「自分だけ目立つ」「自分が優れている」という考え方は敬遠されるのですね。
また、「他人と比較しない」ことで幸福度が上がるという側面もあるようで、世界幸福度調査 で毎年北欧諸国が上位ランクインしていることはこの現れかもしれません。
2021年世界幸福度調査では、ご覧の通りNetworkモデルの国(赤文字)が上位を独占!
≪2021年 世界幸福度調査 ランキング≫
1位 フィンランド
2位 デンマーク
3位 スイス
4位 アイスランド
5位 オランダ
6位 ノルウェー
7位 スウェーデン
”他人と比べない作戦”、効いてますね~。
ちなみに日本は56位です。
人口減の段階では、「前年より成長」とか「~に勝つ」みたいな”勝ち”だけにこだわらず、ひとりひとりの満足に焦点を当てて生きるのも手なのかもしれません。
2. 適しているマネージメントスタイル
適しているマネジメント方法は?
「ショッピングモール型」
ショッピングモール(=組織、企業)の中のショップオーナー(=個人)のイメージです。
- オーナーにとっては、自分の店の運営が優先順位1位
- 他の店やモールから干渉されるのはNO!
- モール全体の運営方針には隅々まで関与(なぜなら自分の店に影響するから!)
- 営業時間や省エネ方針を決めるなど、モールの会議にはもちろん参加
まさに、「平等」「全員参加」「個人主義」の共存ですね!
モチベーションの元は?
「上司が部下を指導する」とか「目標管理で競争」なんてもってのほか!
「ひとりひとりが自分の城の城主」であり、「自分の仕事の領域に口出しされない」ことが重要なのです。
3. コミュニケーションの方法は?
何かを決定するときには、多数決ではなく、関係者全員が関わって合意することを目指します。
そのためには多数の会議が発生しますが、合意のための時間や労力を惜しみません。
また、話し合いの目的は「より良い合意(=皆が満足する)」なので、良い方法を見つけた!と思えば、一度決めたことをひっくり返すのもOK。
私なら、「さっき決めたじゃん!」「時間がもったいない!」と思ってしまうかも・・・Networkモデルの皆さま、なかなか根気強いですね~。
好まれるキーワード、アプローチ
- みな平等
- 全員参加
- 「勝ち」「儲け」より「何のための仕事か」
- 「どうやったら皆が満足できる?」
まとめ
今回は、『7つのメンタルモデル』のひとつ、「Network:ネットワーク」モデルの特徴をご紹介しました。いかがでしたでしょうか?
これは「全体傾向」であり、もちろん個人差はありますが、様々な価値観を知る参考としてご覧いただけたら幸いです!
メンタルイメージをもっと知りたい方はこちらもどうぞ!