「日本人チームだと当たり前だったことが、多国籍チームではうまくいかない。」
ビジネスのグローバル化が進む中で、こう感じたことがある方は少なくないと思います。
それは、「組織とは」「個人とは」「働くとは」といった人生における価値観が、生まれ育った社会環境によって大きく異なるからです。
同じ日本人であっても、年代、性別、地域、志向などで差はあるでしょう。ですから国が違えばなおさら、その差は大きくて当然です。
そのような国ごとの文化の違いを指標で表したのが、オランダの社会人類学者 ホフステード博士の『6次元モデル』です。
そしてオランダの社会学者Huib Wursten氏は、その6次元モデルを元に傾向が似ている国々をグループに分け、『7つのメンタルイメージ』として提唱しました。
今回は、『7つのメンタルイメージ』のうち、中国やインド、東南アジア諸国などで見られる『 Family:家族 』モデルに焦点を当てていきます。
自分では常識と思っていることが、他の人にとっては実は違うのかも?!と考えるきっかけとしてもらえたら嬉しいです!
『 Family:家族 』モデルとは?
まずは、Familyモデルの基本特徴を確認していきましょう。
各特徴は、Huib Wursten氏の『Mental images of culture A perspective to understand misunderstandings In politics, business, religion & …』を参考にまとめています。
主な該当国
中国、香港、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、ベトナム
特に中国で強く見られるモデルです。日本企業が積極的にビジネス展開している国が多く該当します。
特徴
- PDI(権力格差):高い =「権力格差を受け入れやすい」
- IDV(個人主義):低い =「集団主義」
- MAS(男性性):平均的 =「”競争”と”協力” の中間」
- UAI(不確実性回避):低い =「リスクを取る」
ブラジル、タイなどでみられる『Pyramidモデル』とよく似ています。(上から3つの指標は同じ傾向)
異なるのはUAI(不確実性回避)で、Pyramidモデルは「石橋を叩いて渡る」派ですが、Familyモデルは変化に対してより柔軟で、リスクを取ってチャレンジする傾向があります。
キーワード
年上や専門家への尊敬、ヒエラルキー、トップダウン、中央集権、忠誠、実用主義、臨機応変、調和、面子を保つ、ハイコンテクスト(文脈依存)
Familyモデルを理解する3つのポイントとは?
次に、Familyモデルのビジネス面での考え方や価値観を見ていきましょう。
1. 組織や仕事に関する前提
中心となる価値観は?
「ヒエラルキー」と「年配者=知恵」
ヒエラルキーを受け入れており、リーダーには「慈愛に満ちた厳格な家長」像を求めます。年配者に対する尊敬が強いことも特徴です。
組織に対する考え方は?
「中央集権」と「臨機応変」
権力は中央にありますが、Pyramidモデルと比べてより柔軟で、時世や状況に応じた臨機応変さも重視されます。
2. 適しているマネージメントスタイル
適しているマネジメント方法は?
「トップダウン」と「明確な業務範囲」、そして土壇場での即興!
基本的にはトップダウンで、「定められた権限内での業務遂行」を基本とします。
管理体制としては、期待する成果を事前に定めること、明確な指示を出すこと、定期的かつ短期的な報告(日次報告等)を求めること、などが機能します。
また、Familyモデルの特徴として、「土壇場での即興」があります。
Pyramidモデルが厳格な規律などで不確実性を抑制するのに対して、Familyモデルは変化に対応する方を選びます。見切り発車で進めたり、最後の最後で変更したり、といったことが起きるのです。
モチベーションの元は?
Pyramidモデルと同じく、組織やリーダーに対する 「ロイヤリティ(忠誠心)」 がモチベーションの元です。
また、忠誠心の見返りとして、リーダーは人々の世話をし、見返りを与えることが求められます。それは、「出世、面子(メンツ)」や「金銭」であることが期待されます。
3. コミュニケーションの方法は?
面子を保つことや調和が重視されるので、間接的でハイコンテクスト(=文脈依存)のコミュニケーションが好まれます。
また、専門家の見解や正式な調査結果など、”権威ある事実”が尊重される傾向があります。
まとめ
今回は、『7つのメンタルモデル』のひとつ、『 Family:家族 』モデルの特徴をご紹介しました。いかがでしたでしょうか?
多国籍チームのマネジメントや交渉などの参考になれば幸いです!
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