オランダの社会心理学者ヘールト・ホフステード博士は、文化を「ある集団を他の集団から区別する心のプログラミング」と定義し、6つの指標でスコアをつけることでモデル化しました。それが『ホフステードの6次元モデル』(The 6 dimensions model of national culture)です。
今回は、このモデルから発展し、より総合的な文化理解を促す、『7つのメンタルイメージ』(The 7 Mental images of National Culture)をご紹介します!
『7つのメンタルイメージ』とは?
オランダの社会学者Huib Wursten氏が提唱した考え方で、ホフステードの6つの指標のうち、重要度が高い最初の4つの指標を使って世界各国の文化を分析し、傾向が似ているものをグループ化したものです。
人々の指向や価値観、つまり「メンタルイメージ」が似ている国をまとめて見ることができるので、より総合的、俯瞰的に理解することができます。
7つのメンタルイメージは、以下のように分類されています。
グループ | PDI 権力格差 | IDV 個人主義 | MAS 男性性 | UAI 不確実性回避 |
---|---|---|---|---|
Contest:競争 | ↘ | ↗ | ↗ | ↘ |
Network:ネットワーク | ↘ | ↗ | ↘ | → |
Well- oiled machine:油のきいた機械 | ↘ | ↗ | ↗ | ↗ |
Pyramid:ピラミッド | ↗ | ↘ | → | ↗ |
Solar System:太陽系 | ↗ | ↗ | → | ↗ |
Family:家族 | ↗ | ↘ | → | ↘ |
Craftman:クラフトマン | → | → | ↗ | ↗ |
各グループの特徴を知ることで、リーダーシップ、チームワーク、パフォーマンスマネジメントなどにおいて、より良い理解を得ることができます。
『7つのメンタルイメージ』
それでは、7つのメンタルイメージを具体的に見ていきましょう。
Contest:競争
- PDI:権力格差 ↘
- IDV:個人主義 ↗
- MAS:男性性 ↗
- UAI:不確実性回避 ↘
アングロサクソン系の競争文化。権力格差は小さく、個人主義と男性性が高い。不確実性回避の傾向も極めて低い。
Contest:競争 のキーワード
競争、リスクを取る、自己責任、野心的、勝者総取り、結果重視、実用主義、イノベーション、人間関係より契約や実利
Contest:競争 の主な該当国
アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド
Network:ネットワーク
- PDI:権力格差 ↘
- IDV:個人主義 ↗
- MAS:男性性 ↘
- UAI:不確実性回避 →
スカンジナビア諸国に見られる。個人主義が極めて強く、権力格差と男性性が低い、”女性性”社会。全員参加で物事を決定する。
Network:ネットワーク のキーワード
平等、自立、自治、合意、協調、協働、信頼関係、弱者保護、「強者」や「英雄」に懐疑的、行動する前に考える
Network:ネットワーク の主な該当国
スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマーク、オランダ
Well- oiled machine:油のきいた機械
- PDI:権力格差 ↘
- IDV:個人主義 ↗
- MAS:男性性 ↗
- UAI:不確実性回避 ↗
権力格差と不確実性回避の傾向が低い。形式的なヒエラルキーよりも、バランスの取れた手順やルールに準じる。
Well- oiled machine:油のきいた機械 のキーワード
構造化、自治自立、手順の標準化、明確性、専門性への高い評価、演繹的、行動する前に考える
Well- oiled machine:油のきいた機械 の主な該当国
オーストリア、ドイツ、チェコ、ハンガリー、スイス(ドイツ語圏)
Pyramid:ピラミッド
- PDI:権力格差 ↗
- IDV:個人主義 ↘
- MAS:男性性 →
- UAI:不確実性回避 ↗
権力格差が大きく、不確実性回避の傾向が強い、集団主義社会。ラテンアメリカやアラブ諸国などで見られる。
Pyramid:ピラミッド のキーワード
ヒエラルキー、トップダウン、形式的、中央集権、権威主義、専門家や年上を敬う、ハイコンテクスト(文脈依存)
Pyramid:ピラミッド の主な該当国
ラテンアメリカ諸国(特にブラジル)、アラブ諸国、イラン、イラク、ギリシャ、ポルトガル、ロシア、タイ、トルコ、韓国、台湾
Solar System:太陽系
- PDI:権力格差 ↗
- IDV:個人主義 ↗
- MAS:男性性 →
- UAI:不確実性回避 ↗
『ピラミッド』に似ているが、個人主義が強いのが特徴。ヨーロッパに多く見られる。
Solar System:太陽系 のキーワード
ヒエラルキー、トップダウン、中央集権、官僚主義、法律尊重主義、知性主義、演繹的、分析的、名誉
Solar System:太陽系 の主な該当国
ベルギー、フランス、北部イタリア、スペイン、スイス(フランス語圏)、ポーランド
Family:家族
- PDI:権力格差 ↗
- IDV:個人主義 ↘
- MAS:男性性 →
- UAI:不確実性回避 ↘
権力格差と集団主義が強い国々。強い統率力と家父長的なリーダーシップが特徴。
Family:家族 のキーワード
ヒエラルキー、トップダウン、忠誠、専門家や年上を敬う、実用主義、調和、柔軟性、ハイコンテクスト(文脈依存)
Family:家族 の主な該当国
中国、香港、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、ベトナム
Craftman:クラフトマン
- PDI:権力格差 →
- IDV:個人主義 →
- MAS:男性性 ↗
- UAI:不確実性回避 ↗
実は、このカテゴリーに属するのは日本のみ。元々メンタルイメージは6種類だったが、日本がどこにも当てはまらないことから、7つ目が設けられた。
他のアジア諸国と比べると、権力格差と個人主義が平均的である点が異なる。また、男性性と不確実性回避の傾向が極めて高いのが特徴的。
Craftman:クラフトマン のキーワード
信頼関係、調和、「空気を読む」、職場への忠誠とその見返り(例:終身雇用制)、目標は達成すべきもの、無私の精神、あらゆる階層での合意決定(例:稟議、根回し、報連相)、職人気質
Craftman:クラフトマン の主な該当国
日本
まとめ
今回は、世界の国々の文化特性を知る、『7つのメンタルイメージ』をご紹介しました。いかがでしたでしょうか。
人々が個人や組織をどう捉え、どのような人間関係やリーダーシップを求めているのか、大きく違うことがわかりましたね。多国籍企業で働く皆さまはぜひ参考にしてください!
『7つのメンタルイメージ』の続きはこちらの記事でどうぞ!
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